100マス計算で有名な蔭山先生(立命館大教授、立命館小副校長)がパーソナリティを務めセキスイハイムがスポンサーになっているラジオ番組がFM東京でスタートしました。お子達の学力を伸ばしてあげたいとお考えの親御様にはとっても参考になるお話なので、放送された内容の要点を紹介させていただきます。
TOKYO FM 「陰山英男のヒューマン・ラボ」 第1回(10月4日放送) One Point
【漢字のガリ勉は学力向上の特急券】
小学生は6年間でおおよそ1000字の漢字を習いますが、これらをきちんと勉強することは、中学生以降の学力向上にとって非常に重要になります。なぜかというと、教科書というのは今までに習った漢字を理解しているものとして作られているので、漢字の読み書きができないと、勉強そのものがなかなか上手くいかなくなるからです。
ところが、小学校6年生の一般的な漢字定着率は、せいぜい4、5割です。中学生に小学校1年生の漢字テストを行っても、全員が100点満点にならないのは珍しいことではありません。さらに6年生で習う漢字でテストをしてみると、平均点は30点台前半にまで下がります。これでは中学校に上がったときに、教科書が読めなくなるのは当然ですよね。
では、教科書を読めるようにするにはどうしたらいいのでしょうか。そこで、「漢字のガリ勉は学力向上の特急券」となるわけです。
私のいう「漢字のガリ勉」というのは、1年間で習う漢字を、まとめて2週間ぐらいで取りあえず勉強してしまおう、というものです。その学年で習う漢字を、B5サイズ4枚程度に収めた漢字プリントをつくり、そこに並べてある漢字が完全に書けるようになるまで、5回でも10回でも20回でも徹底的にやり込むんですね。
漢字はそれひとつだけを習っても、違う漢字とくっついて熟語になったときに書けない、意味が分からないでは、役に立ちません。漢字1字がきちんと書けるようになったら、言葉の意味を教えた上で、熟語で同じことをやっていきます。
もちろん、この「漢字のガリ勉」をやると、子どもたちはしんどい思いをします。でもこの方法で1年間を乗り切ると、2年目からは、頭の中に“漢字を覚える回路”が出来たかのように、新しい漢字をどんどん覚えていくようになります。そして、知らない漢字を自分で辞書を使って調べるようになったら、勉強することが面白くなってくるはずです。
TOKYO FM 「陰山英男のヒューマン・ラボ」 第2回(10月11日放送分) One Point
【正しい百ます計算のやり方】
まず百ます計算を知らない方のために説明をしておきますと、適当な大きさの紙に「ます」を縦10列、横10列で100個つくり、その「ます」の外、上端と左端に0から9までの数字をランダムに並べていきます。そして、数字同士が交差するところ(ます)を足したり掛けたり、用いる数字を10から20までにして引いてみたりと、時間を計りながら計算をしていくというものです。書店には、「徹底反復百ます計算ドリル」というのが置いてありますので、これを見て頂くと、大変分かりやすいかと思います。
百ます計算の「正しいやり方」に行き着いたのは、兵庫県の山口小学校で学級担任をしていたころに、担任以外の仕事が忙しくなってしまい、手抜きで数字の並びが同じプリントを10日間分ぐらい刷ったことが発端です。
それまでは計算練習ということで、子どもたちを鍛えるために毎日並びを変え、1ヵ月半で平均タイムを1分30秒ぐらいにしていたのですが、同じ並びのものを使ってみると、2週間で同じ平均タイムになったのです。そのときは、同じ問題を続けてやらせてタイムを短くしても、計算力まで上がる訳がないと思ったのですが、普通の計算練習をやらせてみても、計算時間は早く、間違いも少ないという結果が出てしまいました。
つまり百ます計算は、単なる計算練習である以上に、「脳トレ」の側面を持っていたのです。百ます計算のタイムが早くなることは、それだけ脳の回転が早くなっているという証です。さらに計算力だけでなく、聞く力・話す力の向上にもつながっていくので、子どもたちは、先生の言っていることを理解しやすくなり、授業に参加しやすくなります。
また同じプリントであれば、基本的に毎日タイムが上がっていくので、子どもたちはその度に達成感が得られますし、タイムをグラフにつければ、より客観的に自分の成長を確かめられることになります。それに加えて毎日、親御さんや先生から「すごいじゃないか」と褒められると、子どもはやる気をもち、タイムが伸びていく一因になるでしょう。
百ます計算の正しいやり方とは、「同じ問題を毎日やる」、そして「タイムを必ず計る」ことです。適切でないやり方で行うと、なかなかタイムが伸びなかったりしますので気をつけてください。
TOKYO FM「陰山英男のヒューマン・ラボ」One Point 第3回 (10月18日放送分)
【学力は脳の力、短期間に伸びる】
教育の成果は10年、20年経たないと分からないとよくいわれますが、学級担任が変わることで子どもの成績が大きく伸びることがあるように、学力や能力というのは、割と短期間に上がるものです。明日の学力を上げられずに、どうやってその先を変えていくんだ、といった感じですね。
そこで私が注目しているのが、知能指数です。一般的に「知能指数は変わらない」と思われていますが、それは思い込みです。きちんと脳をトレーニングする―すなわち「読み・書き・計算」の反復学習と、その効果を支える「早寝・早起き・朝ご飯」を徹底し、子どもたちの体と脳を元気にすることで、知能指数も大きく変わります。
私が関わり、山口県・山陽小野田市で行った教育プロジェクトでは、市内全小学校の子どもたち4000人近くに、「読み・書き・計算」と「早寝・早起き・朝ご飯」を実践してもらいました。すると9ヶ月間で、知能指数の平均値が9ポイント上がりました。
知能指数はテストの点とも関係してきます。あまり言われていないことですが、目安として、知能指数を2で割ると学力偏差値に近い値が出てきます。どの世代でも平均知能指数は100ぐらいですが、これを100から120に上げれば、偏差値も50から60に上がるというわけです。山陽小野田市でのプロジェクトでは、上昇した知能指数9ポイントに対して、偏差値が4.5上がることはありませんでしたが、それでも平均で3ポイント近い伸びがありました。
子どもたちに与える課題である「読み・書き・計算」の反復学習の具体的なやり方は、追々お伝えしていきますが、端的にいうならば「計算も音読も、スピード・テンポ・タイミングが重要」だということです。ちなみに反復学習は、毎日、10分から30分も行えば十分です。
もちろん最終的な学力に結びつけるためには、きちんと勉強し続けたり、意欲を持って未来を見据えることが当然必要ですが、最初の可能性を大きく広げ、一気にジャンプアップするためには、短期間に子どもたちの脳の力を高めることが突破口になると思います。
TOKYO FM「陰山英男のヒューマン・ラボ」第4回(10月25日放送分)One Point
【成績アップには勉強より朝ごはんのおかず】
先日、以前から交流のある大脳生理学者の方とお会いする機会があったのですが、彼との雑談の中で驚くことがありました。私たちが山口県山陽小野田市で実施した、生活改善・学力向上プロジェクトで判明したことが、彼の考えと一致したからです。それはなにかというと、「子どもたちの学力向上の一番の鍵はおかずである」ということでした。
山陽小野田市のプロジェクトで、驚くほど成長した子どもが数人いたのですが、彼らは普段からおかずが多い朝ごはんを食べていました。当初、朝ごはんをきちんと食べない子どもが食べるようになったらすごく伸びるだろうと考えていたのですが、実際は普段から食べている子どもが、さらに栄養バランスの整った食事をきちんと食べることで、学力がものすごく伸びることがわかったのです。
前出の学者さんは「パンにジャムをつけて牛乳で流し込む朝ごはんは、学習面から考えると食べていないのと同じ」ともおっしゃっていました。また一般的に、脳にはブドウ糖と酸素が供給されていれば十分であると言われていますが、彼は「どうしてそんな嘘が広まってしまったのか」と首をかしげておられました。
私たちも以前から、豊富な食材を採ると成績が上がるというデータは得ていたので、「朝ごはん」には、ご飯と味噌汁のほかに、もう1皿か2皿付けて下さいと呼び掛けていたのですが、今回のデータを受けて、朝ごはんにおかずを追加することがとても大事であると確信しました。
学力向上のために行う努力として、朝ごはんにおかずを追加するというのは結構簡単な方法ではないでしょうか。特に味噌汁にはいろいろな具材を入れることが出来るので、工夫して活用されてみるといいと思います。
陰山英男(かげやま ひでお) 1958年、兵庫県出身。
89年に兵庫県朝来郡朝来町立山口小学校に赴任。「読み・書き・計算」の徹底した反復学習、「早寝早起き朝ご飯」を二本柱に、基礎学力の向上を図る「陰山メソッド」を確立。同校出身者の国公立大学進学率が類を見ない高さだっため、教育実践がメディアで紹介されるようになる。2003年、全国公募により、広島県尾道市立土堂小学校校長に就任。06年4月より立命館小学校副校長・立命館大学教育開発支援センター教授を、08年4月からは立命館小学校副校長・教育開発推進機構教授を務める。]
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